ネタバレ! 小説と映画の感想‐青葉台旭

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映画「シン・ゴジラ」について。

映画「シン・ゴジラ」について。

脚本 庵野秀明
監督 庵野秀明(総監督)、樋口真嗣
出演 長谷川博己 他

ネタバレ注意

この記事にはネタバレが含まれます。

ネタバレ前の余談

私は「シン・ゴジラ」を公開時に劇場で3回、その後、Netflix等の配信サービスで3回、合計6回観ている。

2016年の劇場公開当時、日本では、ちょっとした「シン・ゴジラ」フィーバーのようなものが起きていて、私もそれに乗って自身のブログに感想記事を書こうと思ったのだが、何となく筆が進まないうちに時期を逸して、それっきりになってしまった。

今年(2021年)、庵野秀明樋口真嗣のペアで新たに「シン・ウルトラマン」が公開されるこのタイミングで「シン・ゴジラ」に対する感想を書くのも悪くないと思い、筆を取った。

「シン・ウルトラマン」の主演、斎藤工について。

彼は「シン・ゴジラ」にもチョイ役で出演している。
崩落した橋の下敷きになる戦車中隊長の役で、合計しても1分に満たないほどの出演時間だ。

恥ずかしながら私は、それまで斎藤工という役者を知らなかった。

シン・ゴジラ」劇中、狭い戦車内で命令を発する彼は印象に残った。

何というか、目力(めじから)があるのだ。

その後、彼が「シン・ウルトラマン」に抜擢されたと聞いて、何となく合点がいった。

ひょっとしたら「シン・ゴジラ」の1分足らずの出演は、次作「シン・ウルトラマン」主演への伏線というか、一種のオーディションだったのではないだろうか?

いずれにしろ、「シン・ウルトラマン」の公開は楽しみだ。

以上、ネタバレ防止の余談でした。

以下、ネタバレします。

ひとこと感想

前述のとおり、私は「シン・ゴジラ」を公開時に劇場で3回、その後、Netflix等の配信サービスで3回、合計6回観ている。

当然、映画が面白かったから6回も観たのだ。
それは間違いない。
今でも、総合的には、とても良い映画だと思っている。

……のだが……さて、この映画に欠点が全くなかったか? と問われれば、正直、ストーリー面で文句を言いたい部分もある。

以下にそれを述べようと思う。

本作品が公開された2016年の年末だったと思うが、テレビだったかYouTubeチャンネルだったかで、漫画家の江川達也が、その年に大ヒットした「シン・ゴジラ」「君の名は。」「この世界の片隅に」の3本の映画を並べて、以下のような感想を述べていた。

「これら3作品は、どれも2011年の東日本大震災に大きな影響を受けて作られているが、『シン・ゴジラ』と『君の名は。』は、物語の後半でファンタジーに逃げた。ただひとり『この世界の片隅に』だけが逃げなかった」

もうだいぶ前なので細かい言葉づかいは忘れてしまったが、だいたい上記のような意味の事を言っていた。

それを聞いたとき、私は「いかにも芸術家らしい言い切り方だなぁ」と苦笑したものだが、彼の言わんとする所はよく分かった。

私も「シン・ゴジラ」に関して、江川と同じ思いを抱いていたからだ。

私の感じた「シン・ゴジラ」の欠点を言葉にすると、以下になる。

『物語終盤、仲間の軽口を聞くやいなや、塚本晋也演じる科学者の頭に素晴らしいアイディアが閃いて、彼が思わずポンッと手を打って以降、あまりにも物事がトントン拍子に進み過ぎる

『誰かが何気なく言った冗談から、大逆転のアイディアを思いつく科学者』という余りにも有りがちな描写と、それをきっかけとして都合よく進む逆転劇に、私は、ちょっと「冷めて」しまった。

ひょっとしたら庵野秀明という人は『終わらせるのが下手』な監督なのかも知れない。

ただ、一方で、私が「安易だなぁ」と感じて冷めてしまった終盤の逆転劇は、その「安易さ」も含めて庵野の計算ずくだったのかも知れない、とも思う。

昔、庵野が「アニメっていうのは、どこまで行っても記号でしかない」と嘆き口調で言っていたのを覚えている。

その庵野が、実写映画「シン・ゴジラ」を撮影するにあたって、巨災対の活躍シーンで必ずティンパニの『ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンドン』から始まるアニメ「エヴァンゲリオン」の勇壮なテーマ曲を流したのは何故だろうか?

私の見立ては、こうだ。
「アニメ『エヴァンゲリオン』のティンパニ曲を流すことで、庵野は、観客に『災害リアル・シミュレーションとしてのゴジラが終わり、ファンタジーとしての巨災対の活躍が始まります』とサインを送っている」

シン・ゴジラ」の公開当時のキャッチコピーは「現実(日本)対、虚構(ゴジラ)」だった。
私は、このコピーには裏の意味があると思う。

「現実(には危機に対応できない日本の政治と官僚)対、虚構(巨災対のヒロイックな活躍)」

こんな皮肉が込められている気がしてならない。