ネタバレ! 小説と映画の感想‐青葉台旭

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映画「マーシー・ブラック」を観た

映画「マーシー・ブラック」を観た

U-NEXT にて。

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脚本 オーウェンエガートン
監督 オーウェンエガートン
出演 ダニエラ・ピネダ 他

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ひとこと感想

たまに、アメリカの田舎町が舞台のホラー映画を見たくなる。

ひと口に『田舎』と言っても色々なレベルがあると思う。
例えば『ボロボロのガソリンスタンドだけが営業しているゴーストタウン目前の限界集落』とか。
あるいは『村まるごとカルト教団』とか。

田舎の範疇には入らないかも知れないが、『郊外の住宅地』というのも良くあるホラーの舞台だ。

ホラーの舞台として一番多いのは『アメリカの何処(どこ)にでも有りそうな、平凡で特徴の無い、抽象化された田舎町』だろう。
学校があり、病院があり、警察署があり、教会があり、食料品店、薬局、本屋、カフェがある。
小さな町だが、とりあえず生活に必要なものは何でも揃う。
住人の大半は典型的で平凡なアメリカ市民。

時どき、そんな平凡を絵に描いたようなアメリカ田舎町の雰囲気をマッタリと味わいたくなる。
もちろん、実在するアメリカの田舎町に住んだら色々と大変だろうな、とも思っている。
あくまで架空ファンタジーとしての『アメリカの何処にでもある平凡な田舎町』が好きだ。

で、本作品『マーシー・ブラック」を観た。

主演は、どっかで見た顔だなぁ……と思ったら Netflix版『カウボーイ・ビバップ』の人か。ダニエラ・ピネダ。
我々日本人が親しみを覚える丸い顔立ちなのは、彼女がメキシコ系で、アメリカ大陸原住民の血が入っているからだろうか。セレーナ・ゴメスなんかもメキシコ系で丸顔だよね。

精神科医も見たことのある顔だ。ジャニーン・ガロファロー。『24』の人。

子役が美少年で演技が上手い。
まあ、ハリウッド映画に出てくる子役は、たいてい美少年で演技が上手いんだけど。
25年後くらいにヤク中でボロボロになった姿か、太ったハゲの中年オヤジに変わり果てた姿をパパラッチされるまでがお約束。

本作『マーシー・ブラック』の評価。
普通。 ほんとに、普通。

別に駄作はないが、傑作でもない。
割合にちゃんとした出来だからB級ではないが、A級とも呼べない。
普通としか言いようがない。
気が向いたときにあまり期待せずに観たら、まあまあ楽しめるでしょう。

とりあえず『アメリカの平凡な田舎町』を堪能できたので、私は満足しました。

この物語は、2014年アメリカで実際に起きた『スレンダーマン刺傷事件』から着想を得ているらしい。
そんなことをいちいち気にしていたらホラー映画なんて作れないとは分かっているが、やっぱり現実の被害者がこの映画を観たらどう思うんだろう、というのはちょっと気になる。

それと、クライマックスで伏線も無しに唐突に『この人が犯人でした』と明かされるのも、『雑だなぁ』と思った。

追記(2022.2.9)

かつて友人を生贄にして『マーシー・ブラック』なる魔物の召喚を試みた少女(おそらく当時は小学校高学年)が、精神病院に強制的に収監され、実社会から隔離された環境で十数年間を過ごし、大人になってやっと退院する所から、この物語は始まる。

  • 「青春時代をずっと病院の中で過ごした主人公は、果たして社会復帰できるだろうか?」
  • 「それとも、彼女は未だ『マーシー・ブラック』の妄想に取り憑かれているのだろうか?」
  • 「それとも、魔物マーシーは実在するのか?」

……これが、本作品の主となるサスペンスだ。

ふと、上記のようなメイン・モチーフの他に、裏のモチーフがあるのではないかと思い付いた。

それは『母殺し』と『少年の自立』だ。

主人公の姉はシングル・マザーで、息子と二人で暮らしている。
姉は、自分の息子に対して『お父さんは立派な宇宙飛行士で、今は宇宙基地に長期単身赴任しているから会えない』と嘘をついている。
また、精神病院に入っていた妹(少年にとっては叔母)に関しても、イギリスに留学していたと嘘をついている。

息子が父なし子で彼の叔母は精神病患者であるという事実を隠し、息子の自尊心が傷つかないようにしている訳だ。

しかし、いずれ子は成長し、母親の嘘に気づく。
我が子に偽りの家族関係を信じさせ続けるなんて事は、どだい最初から無理な話だ。

この映画を、
『(嘘で塗り固められた)母親の庇護から抜け出すため、母親と叔母(=疑似的な母親)を殺し、自立する少年の物語』と解釈してみたら、どうだろうか?
もちろんホラーゆえに、母親から自立したあと、少年は化け物になってしまう訳だが。

古代ギリシャ時代より何千年ものあいだ『父殺し』は物語の最も重要なモチーフの一つだった。
おそらく古今東西の物語を紐解けば『父殺し』のモチーフは無数に出てくるだろう。

仮に、この映画に関して上記のような読み解きが可能だとすると、これは世にも珍しい『母殺し』の物語だったという事になる。

追記その2(2022.2.9)

登場人物たちが、魔物マーシー・ブラックを「she=彼女」と呼んでいることに気づいた。
マーシーは女か。

だとすると、少年をそそのかして『母殺し』をさせ、彼を自らの支配下に置いたのは、文字通り『魔性の女』(ファム・ファタール)だった、というオチか。